この記事は、小説『ペンギンは空を見上げる』の感想です。若干のネタバレがありますので、本を読まれる予定のある方は、先に本をお読みいただいた方が新鮮な驚きと感動が得られるのではないかと思います。
ペンギンは空を見上げる 感想
ある方が新聞の書評を見て読んで、面白かったからと薦めてくださった本です。
本の題材として、私にとっては全く馴染みのない、「風船ロケット」というものが出てきます。これは、ペットボトルロケットのように、個人で作れるロケットなのですが(正確にはロケットではないらしいですが)、動力が水を吹き出すペットボトルではなく、風船の浮力です。
それで、高度は大気圏まで達するそうです。
風船がそんな想像を絶する高度まで上がれるものだとは、驚きです。
主人公は小学生ながら、将来はNASAかJAXAでロケットの製作に携わりたいという明確な目標を持って努力しています。そして、インターネットを使えば打ち上げに成功した人のデータが手に入るところを、あえて必要最小限の情報しか収集せずに、自分の力で試行錯誤をしながら風船ロケットを打ち上げていきます。
本に隠された謎(ネタバレ注意)
ここが、ネタバレになってしまうのですが、この小説にはある仕掛けがあります。
勘の良い方はすぐに気がつくのかもしれませんが、私は、第1部の間は全く気にせずに読み進めてしまいました(小説は2部構成になっています)。
第2部で種明かしがあります。それはおそらく、主人公が周囲から距離を置かれ、孤独に生きざるを得なくなった理由でもあります。
第2部を読んだうえで、もう一度第1部を読み返してみると、節々の言動に感じられた不自然さの理由が分かるようになっています。
文字だからこそなんですよね。これができるのは。私は映像作品を見るのも好きなのですが、こういう作品に触れると、やっぱり文字はいいよなと思います。